| ■菅平高原ジャパン応援ツアーの経緯■
菅平高原から各宿の代表が参加して、ジャパン戦の応援ツアーを組むようになったのは、
アジア大会が2年に1度行われるようになった頃からということで、かれこれ20年になります。
諸事情により、各宿とも毎回参加するというわけにもいかないのですが、私どもホテルやまびこは
ジャパンの皆様のご利用頂くホテルとして、ほぼ毎回参加しております。(力入ってます!)
ワールドカップとしては、第2回大会に応援に行ったのが最初です。この時は、ジャパンの皆様と
同じホテルに宿泊し、一行を追いかけて3箇所を移動。身近な感じで応援したそうです。
第3回の南アフリカ大会には菅平からの応援ツアーを組みませんでしたので、
この第4回大会の応援ツアーがワールドカップ2度目となりました。
そう言えば菅平高原の垂れ幕や横断幕を見たことがあるよ、という方もおられるかもしれませんね。
■初日から疲れました■
ロンドン・ヒースロー空港に到着したのは、試合前日の10月8日の晩でした。
ロンドンの気温は、菅平とほぼ同じくらいでしょうか。思ったより肌寒くはありません。
この時期の菅平高原は、夏のトップシーズンを終えて、グランドの芝の種まきや芝刈りなどをする一方で、
ひと足早い初冬を感じながら、冬のシーズンの準備にとりかかる頃です。
「こんなに暖かくては芝が伸びきってしまって、帰ってから刈るのが大変だ・・・」
やはり留守中の宿のこと、グランドのことなど何かと心配なのでした。
今回菅平高原からジャパン応援ツアーに参加したのは、全部で11名。
出発の2日前になって、「ロンドン直行便からパリ経由便に路線変更になりました」という連絡が
ツアー会社から入ったのが運のつき。パリから移動する2時間で疲れ果てた後のこと、
グループの内3名のスーツケースが手元に届かない、というハプニングにあってしまったのです。
なんと、私YAMS3号もその一人!
明日のウェールズ観戦には、着の身着のままで行かなくてはならないなんて。
スーツケースには、応援旗などラグビー観戦グッズを詰め込んでいたのに。悔しくてなりません。
落ち込んだ気持ちのまま宿泊ホテルに到着すると、なかなかゴージャスなホテルのようです。
アメニティも充実しているし内装も重厚で、とても快適な空間でしたので、気分もリフレッシュ。
その晩はぐっすりと眠りました。
■憧れの街カーディフへ■
朝食はちょっとリッチな気分でルームサービスでいただきました。
まだ空は薄暗く、すぐ隣の広大なハイド・パークの森もぼんやりとしか見えません。
朝7:30。私たち11名は、日本からやってきた他の観戦ツアーの人々と一緒にバスに乗り込み、
ウェールズの首都カーディフへ向けて出発しました。
ロンドンから約3時間でウェールズに入ると、空はどんよりと曇っていました。
首都カーディフに近づくにつれ、道路標識以外にラグビーW杯の案内板が増えてきます。こういう
道路標識などの表示には、英語とウェールズ語が併記されているんです。おもしろいですね。
さっきから細かい雨が降っているのに、ウェールズの人々は誰も傘をさしていない。
たまに傘をさしている人がいる、と思ったら日本人だったりして・・・。きっとすぐやむのでしょう。
ラグビー一色で飾り立てられたカーディフの街。
試合は土曜日の午後ということもあって、チケットは既に完売。ダフ屋もたくさんでていました。
添乗員さんがチケットを配る際に、
「このチケットは絶対なくさない様に。命の次に大切にしてください。」
と冗談を言っていました。
街の中心部にあるミレニアム・スタジアム付近は交通規制があって、バスは近くまで入ることができないので、
バスを降りて15分ほど歩きました。
思い思いの格好で赤く着飾った人々の流れが、歩行者天国になった道路をスタジアム方面に
押し寄せていきます。赤いジャージはとにかくかわいい。レッド・ドラゴンの旗もカラフルです。
マントのように肩にかけたり、ワンピースやスパッツにしている女の子達もたくさんいて、
一人一人が個性的に応援ファッションを楽しんでいる感じです。
私たちが日本人だと気づくと、赤い軍団は気軽に声をかけてきたり、盛んにアピールしてきます。
あちらこちらにあるパブも試合前から大変な賑わいで、ビールジョッキを突き上げながら
「ウェールズ!」の雄叫びをあげていました。
まもなく始まるラグビー・ゲームが最高のものになりますようにと、気勢を上げて願う気持ちはみんな同じなのですね。
オフィシャルのラグビーグッズ店では、ウェールズ関連の物ばかりが置いてあり、日本物の
在庫は初めから少ないのか、残念ながらほぼ完売でした。
露店で売っているチーム別マフラーは5ポンド(約1000円)。帽子は10ポンド(約2000円)。
お手頃な値段の割には凝っていてかわいいので、みんなでお揃いで買いました。
ジャパンのマフラーは赤白の縞縞柄じゃなく、ちゃんと桜のエンブレム入りでしたよ。
顔には、桜のエンブレムを両頬にペインティングして。いよいよ準備完了です。
■いざ〜!ミレニアム・スタジアムに入ります■
収容7万2500人のミレニアム・スタジアム。
セキュリティが厳しくとは聞いていましたが、各ゲートには必要以上にたくさんの警備員が黄色い
服装で立っていて、とても物々しい雰囲気です。
チケットは色鮮やかな大判で、半券をもぎられる前に記念写真を撮っておいたのですが、実は
機械に差し込むとバーコードをチェックするだけでそのままの形で出てきました。画期的です。
そのチケットの表記によれば、「○○ゲートの○○階段で○階」まで上がり、その「○○通路」
から入った「○○ブロックの○○列目の○○席です」とあるけれど、これがどうもわかりづらい。
まず案内表示に従って階段をどんどん上がり、とりあえず3階に到着しました。通路番号を
見つけて、2〜3歩前に踏み出すと、目の前にスタジアムの観客席が広がりました。
観客席は3階建てですが、柱のないすり鉢状なので、予想以上にグランドの様子が見やすく
できています。デッドボールライン沿いぎりぎりに観客席が設けられているせいか、目の錯覚か、
グランドがほぼ正方形に見えます。それだけ臨場感があるということでしょうか。
両サイドのゴールポスト裏の天井から吊り下がっている2枚の巨大スクリーンには、先日の
試合が映し出されており、既に客席の人々はビール片手に盛り上がっていました。
各通路口には係員さんがたくさんいて、私たちを親切に席まで誘導してくれました。
残念ながら私たちの席は3階のかなり後方の様です。3階席は意外に急傾斜に造られており、
階段の1段1段の幅が狭いので、手すりを持たずに上っていると目眩がしそうでした。
数年前のフランス・サッカー大会の時のように買占めやダブル・ブッキングがあったりと、各ツアー
会社のチケット確保は大変だったそうで、同じツアーでも席はばらばらに離れてしまいました。
1階席を陣取っている日本人の方々が羨ましかったですね。
まだキックオフまで1時間以上あるため観客席はガラガラでしたが、次第に盛り上がっていく
スタジアムの雰囲気に身を置いているうちに、自然と自分も気持ちが昂ぶっていきました。
観客の盛大な拍手とともに、グランドではジャパンの選手たちのアップが始まりました。
目の前でストレッチをしているジャパンの選手一人一人に、「頑張れ!」と声援を送りたい。
選手を支えるテクニカルやメディカルスタッフたちにも、「いよいよですね」と声をかけたい。
このスタジアムのほとんどの人々がウェールズを応援しているとしても、緊張して異様な熱気に
飲み込まれることなく、今までやってきたことすべてをこのゲームで出し尽くしてほしい。
この新しいスタジアムで大観客の前でラグビーができる幸せを力にして、最後まで闘ってほしい。
次第に座席は、赤いジャージ軍団で埋め尽くされていきました。
鼓笛隊や聖歌隊が登場して歌を歌い始めると、観客も一緒に歌い出し一つにまとまっていきます。
大きく掲げられた両国の国旗と、その前に並んで記念撮影する選手たち。
ウェールズの国歌がスタジアム全体を揺さぶるようにこだますると、胸が締め付けられるような
気持ちになり、こちらまで熱くなります。
いよいよキックオフ。 と、その時・・・。
■なんともツイてないんです…■
階段を登って来た老夫婦が、私たちに向かってチケットを見せながら、「そこは私の席よ」なんて
言うのです。そんなはずはないでしょ、と隣の席の人のチケットを見せてもらって比べると、
ブロック番号が違うではないですか。階段に待機する係員さんに慌てて問い合わせると、
私たちの席は1ブロック隣で、それも一旦階段を降りて隣の通路から入り直さなくてはいけない
らしいのです。そんなことを今更言われても・・・。ちゃんと誘導してもらったのに・・・。
早くしないとキックオフに間に合わない。怒りながらも係員さんの誘導に従うしかない。
席が違っていた4人は揃って階段を降りきり、次の係員さんの後をついて隣の通路口へ。
この係員さんは、私が「ここは違うんじゃないの?」と尋ねると、「大丈夫」なんて笑いながら
次の係員さんの所まで案内して、バトンタッチ。私たちは後をついて、階段を一気に上がります。
上がったところに席が4つ並んで空いているはず・・・なのに、なんで空いていないの?
なんと、またまた係員さんの誘導が違っていたのです。ほらね。
呆れながら、再び階段を下る。下る。私たちが慌てて階段を走っている間に、ゲームは
いつのまにか始まっているんです! こんな時に、もう目立ちまくりですよ。
冷汗かいて。油汗かいて。息はきれるし、足はつりそうだし。
さっきの係員さんから新しい係員さんに再度バトンタッチして、またまた上がる。上がる。
今度こそ、上がったところに席が4つ並んで空いているはず・・・。えっ、またないじゃない?
係員さんは慌ててしまい、既に座っている人のチケットと私たちのチケットを見比べて、
「同じ券じゃないか?」などと、不吉なことを呟いたのです。
まさか、この期に及んで、ダブル・ブッキングだあ? 冗談じゃないわよ!
よくよく見れば、先に座っていた人たちが席を間違えていたのでありました。
ようやく席について、ホッとひと安心。汗だくで疲れきってしまいました。
君が代を歌うこともできず、キックオフも見ていないけれど、とにかくジャパン頑張って〜。
そう言えば、バタバタと走り回っていた日本人4人組がいたよな、と思い出されたあなた。
あれは、YAMS3号でありました。トホホ・・・。
■感動をありがとう■
いったい何処から誰が歌い出すのでしょう。
自然と始まる美しい歌声は、すぐハーモニーとなってスタジアム全体に響き渡るのです。
地面から湧き上がるような歌の迫力に、感動して涙があふれそうになるものの、日本人は一緒に
歌えないという心寂しさが残ってしまいました。
日本人の声援は歌や大歓声にもみ消されながらも、ジャパンの人々に届いたでしょうか。
ウェールズの人々は、いいプレーがあると、ジャパンにも惜しみなく拍手を捧げてくれました。
途中交代で下がっていく選手たちへの拍手も非常に暖かいし。
「ウェールズ! ウェールズ!」の雄叫び。大歓声。われんばかりの拍手。
場内アナウンスで選手の名前が呼ばれるとウォ〜。スクリーンにリプレイされるとさらにウォ〜。
ヘンリー監督がスクリーンに映し出されると、試合中でも拍手と歓声が上がるのですから。
さすがに平尾監督が映っても、歓声は上がりませんでしたけれど・・・。
時には、1階から3階まで一本の大ウェーブがスタジアムを駆け巡りました。
ウェールズの人々のラグビーに対する熱狂ぶりは大変なものです。
母国を誇りに思い、ラグビーを愛し、全身で満喫している人々。
前半、奮闘するジャパンに対し、ウェールズは手を抜くことなく速いプレーで攻め続けてきました。
ウェールズFWの強い当たりに耐え、執拗なタックルで食らいつくジャパン。
ボールへの執着心を忘れずに、捨て身になって走りこみ、つないでいく姿は胸を打つ。
BKの速い展開を食い止めながら、ようやく生まれたジャパンの2つのトライ。
ハーフタイムのとき、ジャパンはみんな本当に頑張っている、と痛感しました。
後半、ジャパンは前半の疲れからかボールがとれず、ディフェンスばかりになってしまいました。
ウェールズは、ジャパンの防御の隙を狙って速攻で攻め立て、連続トライを浴びせかけてきます。
点差が離れていくにつれ、ウェールズは余裕の表情で次々と途中交代で下がっていく。
ジャパンの選手たちの気持ちを考えると、やりきれない思いでいっぱいでした。
それでも選手は最後まで力の限りに奮闘し、ウェールズを止めつづけました。
ノーサイド。
ウェールズの壁、世界のレベルは高かった・・・。
ジャパンは確実にレベルアップしていると思う。選手やスタッフの方々が今日までやってきたこと。
それが、得点として試合結果に現れなかったことがとても残念です。
ジャパンの皆様、本当にお疲れ様でした。
■ノーサイドの後に■
スタジアムを出たところで記念撮影をしていると、地元のかわいいレッド・ドラゴン・ギャルズが
一緒に撮って、と列に入ってきました。あっという間に大勢集まって、ウェールズ人も日本人も
みんな一緒に記念撮影となりました。ギャルたちはテレビ・インタビューも受けてました。

帰り道、道路脇のパブはどこも、勝利に沸く赤い軍団で大変な賑わいです。
日本に大勝して、誰もがとてもご機嫌なのです。
こちらは肩身が狭いな、なんてそそくさと歩いていると、ウェールズの人々はとても気軽に
「ナイス・ゲーム!」と声をかけてくれます。「日本はよく頑張ったよ!」なんて。
私たちがお返しに「ウェールズ NO.1!」と言うと、さらにご満悦な表情で「ウェールズ NO.1!」と
連呼する。これでいいのですよね。
もし日本がウェールズに勝っていたとしたら、こんなに穏やかにスタジアムを後にすることが
できたのやら・・・なんて、余計な心配もしてしまいました。
ラグビーを愛し続けているこの国の人々の心に接し、情熱を感じ、観客の一人として素晴らしい
ゲームを観戦できたのです。試合には負けてしまったけれど妙に爽やかな気分でありました。
ロンドンまで帰るバスの中、ほとんどの人は疲れきって眠っておられましたが、私は何故か
興奮冷めやらず、眠れないまま今日の試合を振り返っていました。
これで終わりではない。ジャパンよ、これからも頑張って!
わたしもラグビーを応援しつづけます・・・ YAMS3号
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